会長メッセージ

日本会計教育学会設立によせて

日本会計教育学会会長 柴 健次
日本会計教育学会会長
柴 健次

日本会計教育学会は、2009年2月10日に札幌学院大学社会連携センターにおいて「日本会計教育学会発起人会」および「第1回理事会」が開催され、日本で最初の「会計教育に関する専門的研究学会」として設立されました。

初代会長に青森公立大学教授の藤永弘先生が就任され、2011年9月14日・15日開催の第3回全国大会(熊本学園大学)までお務めになられました。藤永先生はこの学会草創期の2年半の間に、人的側面から学会の基礎を築かれ、学会活動の仕組みを整備するとともに、会計教育課程と会計方法の研究・開発に取り組まれてこられました。

さて、これからの3年間の第2期会長をお引き受けすることになった私は、藤永会長の基本方針を引き継ぎ、全役員とともに、学会活動を一層充実させることを目的としたいと思います。第一に会員の拡充を図りたいと思います。第二に、このたび創刊される学会誌を育成したいと思います。第三に、わが国における会計教育の改善のために内外の組織との連携をはかりたいと思います。

第一の課題は会員の拡充です。第3回全国大会において会員は76名に達しました。第2回全国大会からの倍増の勢いです。現在でも多くの会計教員が当学会に関心を寄せていただいていることから、今後の3年間で、現在の2倍、3倍規模への増加が見込まれます。そのため、多様な関心を有する教育者・研究者を誘引する現実的で魅力ある企画を打ち出す必要があると思います。

第二の課題は研究成果公表の場の充実です。会員の全面的なご協力により学会を定期的に開催することによって第一の場を提供するとともに、佐藤信彦編集委員長とともに第二の場である学会誌を育てていく必要があると思います。信頼される学会誌に育てることにより、教育・研究に従事されている先生方に、教育改善と研究水準の目安を提供でき、教育上・研究上の意見交換の機会を提供できることになります。

第三の課題は、内外の諸組織との連携です。藤永会長時代から、日本学術会議、全国ビジネス系大学教育会議、経営関連学会協議会との連携が図られてきており、経営リテラシーの定着、学士課程の質保証や分野別参照基準の策定などが関心を集めてきました。私は会長就任直後の2011年11月に国際会計教育学会(IAAER)ベニス大会に参加し、当学会の広報に努めてきました。IAAERでは、会計教育を狭く解することなく、広く会計問題を取り上げており、開催地域の学会との連携も模索しておりました。参考になりました。

さて雑誌『企業会計』の2011年12月号に現在の教育課題を抽出する方法を提示しました。最近話題の原則主義と細則主義(準拠主義)を教育一般に通じる習得目標として教育現場の現状を図式化しました。ここに、原則主義的判断能力は、先例なき事例における先駆者的判断、本質に立ち戻っての判断ともいえ、他方、細則主義的判断能力は、先例ある事例における先例準拠主義(同時に先例なき事例における判断停止)、本質を問わない判断と考えてみます。

教育における基礎的な
教育目標
習得目標としての基礎的判断能力
原則主義的
判断能力
細則主義的
判断能力
適用する教育の二つの主義 学習者主体の
構成主義的教育
A  構成主義による原則主義的
  判断能力の習得
C  構成主義による細則主義的
  判断能力の習得
教授者主体の
教化主義的教育
B  教化主義による原則主義的
  判断能力の習得
D  教化主義による細則主義的
  判断能力の習得

いまここで我々自身が謙虚に反省して、教化主義的教育を是とし、細則主義的判断を常識とする従来の傾向を認めるならば、現代社会における教育はDのポジションにあることが分かると思います。おそらく、理想的には、DのポジションからAのポジションをめざす教育改革が求められると思いますが、直ちにその移行が難しく、当面Bのポジションをめざす可能性もあるでしょう。他方、Dのポジションにおいてさえ、学習内容を習得できない学習者がいて、細則主義的判断能力を養成するためにさえ構成主義的教授を行う可能性(DのポジションからCのポジションへの移行)という消極的な改革も求められるのかもしれません。

こうした教育の現状を踏まえて、解くべきテーマを絞って研究するプロジェクトが設置されています。2011年の第3回全国大会では橋本尚先生が主査を務めるIFRS教育のためのテキスト作成に係るプロジェクトが最終報告を迎えました。2012年の第4回全国大会では藤永弘先生が主査を務める学士課程の質保証と参照基準の策定に係るプロジェクトが最終報告を迎えます。2013年の第5回全国大会では柴健次が主査を務める教養としての会計学に係るプロジェクトが最終報告を迎えます。その後のテーマ設定も順調にいきそうです。

我々教育者は現場で抱える問題を共有しあい、切磋琢磨して教育力を高めることによって、学習者の理解力を高めることができると確信しています。本学会を通じて会計教育が改善されれば学会設立の意義があったといえます。関心ある先生方の入会を心よりお待ちしております。

平成23年12月1日

▲ ページの先頭へ